近年、企業の情報システム部門（以下、情シス）は、急速に進化する技術革新とビジネス環境の変化に直面しています。デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進、サイバーセキュリティの強化、そして人材不足など、多岐にわたる課題が浮上しています。これらの課題に対応するための有効な手段として、アウトソーシングの活用が注目されています。本記事では、近年情シスが直面する主要な課題と、それらを解決するためのアウトソーシングの活用方法について詳述します。
目次
近年情シスが直面する主要な課題
・デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進
DXは、企業が競争力を維持・向上させるために不可欠な取り組みです。しかし、DXの推進には高度な技術力と戦略的な視点が求められ、情シスには以下のような課題が生じています。
- レガシーシステムからの脱却：多くの企業が依然としてレガシーシステムを使用しており、これらのシステムの老朽化や複雑化がDX推進の障害となっています。経済産業省のレポートでは、「2025年の崖」としてこの問題が指摘されています。
- 組織全体のデジタル文化の醸成：DXを成功させるためには、情シスだけでなく、全社的なデジタルリテラシーの向上と文化の醸成が必要です。
・サイバーセキュリティの強化
近年、サイバー攻撃の高度化と巧妙化により、企業のセキュリティ対策はますます重要性を問われる機会が増えています。情シスでは以下の課題に直面しています。
- セキュリティ人材の不足：高度なセキュリティスキルを持つ人材の確保が困難であり、組織内でのセキュリティ対応力の強化が求められています。
- 最新の脅威への対応：日々進化するサイバー脅威に迅速かつ的確に対応するための体制整備が必要です。
・IT人材の不足とスキルギャップ
技術の進歩に伴い、必要とされるスキルセットが変化しています。しかし、市場でのIT人材の供給不足や既存スタッフのスキルギャップが課題となっています。
- 新技術への対応力不足：クラウドコンピューティングやAIなどの新技術に対応できる人材が不足しています。
- 人材育成の遅れ：急速な技術進化に対し、社内での人材育成が追いついていない状況です。
・リモートワークの定着と管理
パンデミックを契機にリモートワークが定着しつつありますが、それに伴う課題も浮上しています。
- セキュリティリスクの増大：リモート環境でのセキュリティ対策が不十分な場合、情報漏洩のリスクが高まります。
- コミュニケーションの希薄化：物理的な距離が生じることで、チーム内のコミュニケーションが減少し、業務効率やモチベーションに影響を及ぼす可能性がありま
アウトソーシングの活用による課題解決策
上記の課題に対し、アウトソーシングの活用は非常に有効な解決策となります。具体的な活用方法は以下の通りです。
・DX推進における専門知識の外部活用
DXを推進するためには、最新の技術知識と実践経験が必要です。しかし、これらを社内で全て賄うことは難しい場合があります。そのため、以下のようなアウトソーシングが有効となります。
- DXコンサルティングの活用：外部の専門家による戦略立案や実行支援を受けることで、効果的なDX推進が可能となります。
- システム開発の外部委託：新しいデジタルサービスやアプリケーションの開発を専門企業に委託することで、スピーディかつ高品質な開発が期待できます。
・セキュリティ対策の強化
セキュリティ分野の専門性と迅速な対応が求められる中、以下のアウトソーシングが効果的です。
- セキュリティ運用監視サービス（SOC）の利用：24時間365日の監視体制を外部に委託することで、内部リソースの負担を軽減しつつ、高度なセキュリティ対策を実現できます。
- 脆弱性診断やペネトレーションテストの外部依頼
サイバー攻撃の手口は日々巧妙化しており、定期的な脆弱性診断やペネトレーションテスト（企業のネットワークやシステムに対して 疑似的なサイバー攻撃を行い、セキュリティ上の脆弱性を特定・評価するテスト）を実施することが求められます。これらの業務を専門企業にアウトソースすることで、社内では見落としがちなリスクを発見し、適切な対応を講じることができます。 - ゼロトラストセキュリティの導入支援
近年、従来の境界型防御に依存しない「ゼロトラスト」セキュリティモデルが注目されています。しかし、その導入には専門的な知識と運用ノウハウが不可欠です。アウトソーシングを活用すれば、ゼロトラストの設計・導入・運用をスムーズに進めることができます。
・ IT人材不足の解消とスキルギャップ対策
- 専門技術を持つアウトソーシングの外部エンジニアの活用
IT業界では、クラウド、AI、データ分析などの分野で高度なスキルを持つ人材の確保が困難です。この分野のエンジニアを外部の専門企業のアウトソーシングを活用することで、社内での即戦力不足を補い、迅速な技術導入が可能になります。 - 教育・研修のアウトソーシング
社内のIT人材のスキルアップを目的とした教育プログラムを外部の専門機関に委託することで、最新技術の習得を促進することが可能になります。特に、クラウドサービス（AWS、Azure、Google Cloudなど）やサイバーセキュリティに関する実践的なトレーニングの提供は、業務効率の向上にもつながります。
・リモートワーク環境の整備と管理の最適化
- VPN・ゼロトラストネットワークの導入支援
リモートワークが定着する中、セキュリティを確保しながら柔軟な働き方を実現するために、VPNやゼロトラストネットワークの導入が進んでいます。これらの設計・運用を専門企業に委託することで、内部の負担を軽減し、より強固なセキュリティ環境を構築できます。 - リモートワーク用ITサポートのアウトソーシング
在宅勤務の増加に伴い、社内ITヘルプデスクの負担が増大しています。リモートワーク環境に特化したITサポートサービスを活用することで、迅速かつ効率的なトラブル対応が可能となります。
アウトソーシング導入を成功させるためのポイント
・委託範囲と業務内容の明確化
アウトソーシングを成功させるためには、委託する業務範囲と期待される成果を明確に定義することが重要です。具体的には、以下のポイントを事前に整理しましょう。
- 現状の課題とアウトソーシングの目的
- 具体的な業務範囲（例：セキュリティ監視、クラウド運用管理、ITサポートなど）
- サービスレベル契約（SLA）の策定
・信頼できるアウトソーシングパートナーの選定
アウトソーシング先を選ぶ際には、単なるコスト比較ではなく、以下の要素を考慮することが重要です。
- 対応スピードとサポート体制（24時間365日対応の有無）
- 過去の実績と専門性
- セキュリティ体制（データ保護・コンプライアンス対応）
・内部ITチームとの連携強化
アウトソーシングを活用する場合でも、すべての業務を外部に任せるのではなく、内部のITチームと適切に連携することが不可欠です。
- 定期的な情報共有ミーティングの開催
- 役割分担の明確化（アウトソース部分と社内対応部分の切り分け）
- ナレッジ共有の仕組み構築
まとめ
近年の情報システム部門は、DX推進、サイバーセキュリティ強化、IT人材不足、リモートワークの定着など、さまざまな課題に直面します。これらの課題を解決するために、アウトソーシングの活用は非常に有効な手段となります。
・アウトソーシングを成功させるためのポイント
- 委託範囲と目的を明確にする
- 信頼できるパートナーを選定する
- 内部ITチームとの連携を強化する
適切なアウトソーシングの活用により、情シスは本来の戦略業務に集中し、企業のIT基盤を強化することができます。今後の変化に対応するために、今から最適なアウトソーシング戦略を検討し、実践していきましょう。
